はしづめ明子 日本共産党逗子市議会議員
はしづめ明子 日本共産党逗子市議会議員はしづめ明子 日本共産党逗子市議会議員

(第2回) 新宿滞水池問題の市長と市民との対話集会

ブログ用 12.10.06 新宿滞水池問題 対話集会    10月6日、市役所で「新宿滞水池築造計画に関する市長と市民との対話集会」が行われ、岩室議員が参加しました。今回の集会は市当局が開いたもので、翌日には工事説明会も予定されていることから、事実上、時間制限もなく、5時間15分間も行われました。

市長の挨拶後、この間に地元住民から寄せられていた以下の6項目について、順次議論が行われ、市長が返答する形式で進行されました。

(1) 市民参加条例の件

(2) ISO14001を遵守した環境側面の評価について

(3) 新宿滞水池の1100㎥の有効性について

(4) 逗子市下水道問題の著しい環境要因について

(5) 滞水池と環境の調和について

(6) 臭気対策について

(1) 市民参加と条例適用については?

回答 「市民参加条例の対象事項には該当しない」

    「市民参加の機会を積極的に確保することが責務」

市当局の姿勢は、当初どおり新宿滞水池計画は「条例の対象とならない」と説明されました。あわせて10月2日に開かれた市民参加制度審査会について、新宿滞水池問題の手続きが議論された経過も報告され、改めて制度の上では対象とならないとされ、但し、条例の対象にならなくても、市の姿勢として積極的に対応することもできることが指摘されたと言うことです。市長は計画と予定地の変更した時点で、地元周知と理解を求めることが十分でなかったことを認めながらも、一方で予算と契約も議決を得て、工事着手の期限もあることから「計画」を進める意向が改めて示されました。また、未処理の汚水を放流している状況があって、やらなければならないと工事着手への決意を述べていました。

質疑の中で、市長は「下水道運営審議会(以下・審議会)」に諮ったと説明していましたが、審議会は報告を受けた程度で、諮問と答申はなく、審議会の主な議論は下水道料金となっている事実があります。市民参加を標榜するのであれば、計画段階から市民参加を求めるべきではないでしょうか。

【市民の意見】

○「条例に適用するか?しないか?は、グレイゾーンのような基準であり、役人の立場ではなく、市民の立場に立ってほしいし、市長はどちらに立っているのかをよく考えて欲しい」と市長を応援してきた方からも残念がる声がありました。

○「(汚水滞水池は)迷惑と思っているし、デッキレースに思える。不安を感じている住民はやめてくれと言っている」

(2) ISO14001を遵守した環境側面の評価は?

回答 「法令を遵守していきます」

市の主張は、①平成25年までに目標達成が必要。

②汚濁負荷量の削減(12.8トン)。

③未処理下水の放流回数の半減化(ハイランド地区の年69回→34回へ)

④夾雑物(ゴミ等)の除去→目標達成済み

市当局の計画の目的について、久木ハイランド地域の合流式を改善すること。また、国の補助金を受けていねから、やめられない計画であると説明を繰り返しました。

しかし、将来的に久木ハイランド地域の合流改善が完了した場合、滞水池は必要となくなるわけです。実際には、市の主張する背景には、合流式改善だけでなく、深刻な問題の不明水対策と新宿ポンプ場対策があります。

(3) 新宿滞水池の1100㎥の有効性について?

回答 ①汚濁負荷量の削減300㎥ (BOD約1トン/年)

    ②未処理下水の放流回数の半減化800㎥ (57回/年→34回/年)

市の主張 久木ハイランド吐室からの放流回数を削減し、大腸菌など細菌の流出防止によって、きれいで快適な海水浴場にする。

質疑では、「なぜ?新宿なのか」と率直な意見が出されていました。市長は「新宿の公有地がなければ別の方法をとることになった」、合流改善だけでなく「不明水と新宿ポンプ場保護につながるもので、付加的に考えている」、平成20年の見直しの際、いろいろな意味となったもので、新宿滞水池計画は、コスト面と機能面を考慮した合理的な判断をしたものであると強調していました。

また、市長からは、久木ハイランド地域の合流改善をする場合は1kmで1億円、12kmの内で完了は2kmしているが、残り10kmで10億円が必要と言うことでした。

新宿滞水池の機能は、久木ハイランド地域は46ヘクタールで、雨量が3ミリから4ミリでいっぱいになる。5ミリ以上で放流が始まることになる。5ミリの雨が1時間程度降った場合、1100㎥は一杯になると言うことです。

終末処理場の現状は、もう一つの合流式地域の桜山は、桜山吐口をかさ上げして、未処理水の放流を減らす一方で、雨水で薄まった汚水が大量に流入している状況です。もう一つの系列の新宿ポンプ場を通じて久木ハイランド地域の雨水を含んだ汚水が流入しています。処理場には、量的な限界と浄化機能の限界もあります。雨水を大量に含んだ下水を処理することは機能が低下せざるを得ないことになります。そのため簡易処理(バクテリア処理を除く)で対応し、海へ放流している実態があります。現状は一定量を超えれば未処理水について、河川を通じて放流することが繰り返されてきました。

しかし、新宿の地元住民から見れば、桜山地域から下水には具体な改善対策でなく、ハイランド地域側、たまたま新宿に耐水池を建設する用地が確保できたから作りますと言う説明になっているわけです。また、計画地の選定も十分な検討が加えられたとは思えない説明になっていました。処理場の対策につながるより、国の目標にしている未処理水の放流回数を優先し、拘った計画には疑問が多くの残る説明でした。

(4)逗子市下水道問題の著しい環境要因について

新宿滞水池以外の選択肢は?

●合流式改善計画を変更した理由は?

平成16年に策定された「計画」は以下のとおりです。

    ① ハイランド地区の完全分流化

   ② ハイランド雨水滞水池+処理場の高度化

平成20年の見直し、当初の「計画」を以下の理由から変更した。

    ① 建設費が2.3倍、

   ② 敷地が狭い

   ③処理場施設の改造が困難である。

 

●新宿中継ポンプ場の能力アップと管渠・処理場の補強は?

①建設費が10倍

②ポンプ場も、処理場も機能を強化するための用地確保が困難。

●既存の管渠への貯留は?

① 現時点で、管渠内に余裕はない。

② 降雨時の新宿中継ポンプ場のポンプ井戸の水位を上げる実験は危険である。

質疑では、新宿滞水池は「わずか15分しかもたない」、本当に必要な施設であるのか疑問があるし、納得いくためには、桜山とハイランドの放流堰と終末処理場には、「未処理水の放流量を測るための水量計を設置してほしい」と求める声がありました。

また、「新宿ポンプ場は、汚水が600㎥のところが、実際には4500㎥も通過している」「降雨開始後のファーストフラッシュを取り込めるのか」など疑問の意見もあがりました。

市当局は、新宿滞水池で、6~7ミリで未処理水を放流していたものが、15~16ミリまで滞水池で受け止めて、改善対策となると説明していました。

不明水対策が合流改善より優先されるべきでは?

市長は「どちらも重要な課題である。ただし、合流式緊急改善事業が優先すべきだと考えている」「地震対策、老朽化対策、処理場などの延命化にも取り組む必要がある」と説明。

●ハイランド地区46ha地区より、面積も大きい桜山地区の66haへの対策を講じるべきではないか?

① 桜 山 地 区 15回/年 目標を達成している。

②ハイランド地区 61回/年 目標が未達成となっている。

(5) 滞水池と環境の調和について

市民からは「住宅地(下水施設の建設)を避けるべきではないか!」と言う意見について、市長からは「新宿滞水池は、下水道の幹線ルート上で住宅地を避けることはできない」「逗子の川と海の環境負荷を減らすことになる」と計画の必要性を繰り返しました。

(6)臭気対策について

市当局からは、新宿耐水池は、年間60日、稼動日数は120日程度見込んでいる。脱臭装置は二基あり、自然通風式と強制換気式を採用していると説明。

市民からは、脱臭装置があっても不安があるとの意見に対し、市当局は「滞水池内の空気は、必ず脱臭装置を通過し、供用開始後もモリタリングを続ける。万が一、臭気問題が生じた場合、速やかに対策を講じたい」と説明。

  市長からは「近くの新宿ポンプ場も臭っていない」「みなさんが生活に困るようなことはない」と断言していました。

市民からは「新宿ポンプ場は臭わないから、滞水池は大丈夫と言うのはおかしい」と反論がありました。また、滞水池の清掃では超強力バキューム車の利用が考えられていることについて、市当局は「通常は使用しないし、年数回にとどまる予定である」と説明。

臭気は人によって大きく違い、臭気強度を測る尺度は、実際に人間による臭いを感じたものを数値化ものです。そのため「臭わないようにしてください」「臭いが出た場合、滞水池の使用を停止することを約束してほしい」と心配する声が複数あがりました。

市当局は「臭気問題が発生した場合は、問題が改善されるまで停止させる」と約束していました。

しかし、滞水池計画では、国の終末処理場の臭気基準が採用されています。その基準は臭いが特定できる程度とされています。そのことを考えると逆に臭気が発生しても、国の基準以下であれば、使用を継続する可能性もあり、使用停止を確約したものではありませんでした。市当局の再答弁では、国の基準について強調した上ではっきりと「臭わないとは言い切れない」と臭気が発生することを前提に考えているようでした。

新宿滞水池問題は、市民への情報提供と情報公開、行政の説明責任が大きく問われた問題です。また、下水道の汚水施設であることから、一般的には迷惑施設です。他自治体でも市街地の中心に設置することは極めて難しいことから、市街地から離した場所に整備されています。

市長並びに市当局は、速やかに家屋調査を実施し、本格着工へと進める意向を変えていません。しかし、もう一度、時間をかけても、地元住民には、十分な理解と合意を得る必要があり、その努力が必要です。